長田寮活動報告

今月も桜咲く・・・続編からお伝えします。
寮生のA君ですが、先月のお手紙には中京大学・愛知大学に合格とお伝えしましたが、その後、 朗報がまたまいこみました。
本人も中京大学経営学部、経済学科に入学手続も進め、授業料や同窓会費も振り込み、後は入学を 待つだけ・・・という穏やかな日々が続いていたある日・・・。
バイトで学費を少しでも稼ごうと 清掃会社でアルバイトしている最中の栗原君に一本の電話が入りました。
「国立○○大学ですが・・・」
 今回、○○大学を受験していたものの、3月21日の合格発表の日、 自分の名前が無かっただけに、200%不合格と思っていたA君でしたが、ナント!A君が 国立○○大学に合格したという大学からの一報だったのです。
3月21日の不合格発表から3日後に、今度は一転して「合格しました」の連絡が入ったのです。
本人が驚くのも無理はありませんが、私たちも驚きを隠せませんでした。
しかも、昼の12時までにその返事をするように・・・という内容だったらしく、手元の時計を見ると残り3時間しかないではありませんか・・・。
動揺するA君から「どうしたらいいでしょうか・・・」の連絡が入った時、
ご両親と相談する時間も無く、ましてや今ご不在かもしれない・・・
せめて今日一日の時間があれば、 と思いましたが、私たちはここで躊躇している時間はありませんでした。
「少し待ってください」とでも言うならば、せっかくの合格も取り消しになりかねないからです。
この場では、合格を承諾する旨の連絡を国立○○大学に入れざるを得ませんでした。
そして、A君と 話し合いの末、お受けするという連絡を大学にいれたのです。
昼過ぎ、バイトどころではなくなった A君が寮に帰ってきました。
そして話し合いをした時、A君はすでに国立○○大学入学を心に決めており、幸い中京大学振込み済みのお金も戻ってくるとのことで、この日、○○大学へ入学するという 決意を新たにしたのでした。
それからがA君は大変でした。穏やかな日々が一転、超多忙な日々に変わったのです。
次の日、 ○○県に出掛けアパート探しと同時に入学手続も行い・・・・
A君いわく「激動の一週間でした。」 と、まさしく"嬉しい悲鳴"を上げておりました。
こうして将来は税理士・公認会計士の夢に一歩 近づいたのです。
実はこの一歩、数ヶ月前まではA君自身、全く想定していませんでした。
ことの始まりは、ある日の大学受験の手続時、私学のみ目指していたA君に指導員が言った一言からはじまりました。
「A君。私立だけじゃなくって国立も受験してみたら!」しかし、その返事は大きく手を振りながら
「そんな!絶対無理ですよッ!」と断言したのでした。
これにめげず指導員も返した言葉は・・
「やってみなきゃわかんないよ!ただ学費が安いからという意味で言っているんじゃなくって、行きたい大学、学びたい教授があればそこを目指せばいいけど、国立大学にもそういうところがあるかもしれないし、もっといろいろ調べてみたら・・・」
そして、探しあてたのが国立○○大学だったのです。
入寮してくる子どもの多くは、頭で考えて結論付け、実際に行動に移さない・・・という傾向にあります。
「やっても無理だから、無駄な事はしない」・「自分にはきっとできないから、叶うわけない」 A君は寮のなかで子どもたちに慕われ、人望もあるしっかりとした好青年です。
しかし、こと 国立大学受験に於いては、真っ向から"無理!"と決め付けてしまったのでした。 A君は高校2生で中退し、いろいろありましたが、長田寮で訓練を積み仕事に励んでいましたが、 途中で大学を志し一年間受験勉強をしました。
大検に合格し、そして一発合格を果たしたのです。
夢を叶えるために努力したからこそ達成できましたし感動がありました。
他の寮生も「やればできるんだ」・「大学を目指したい」などと今回の大逆転劇が良い刺激になり、A君は背中で子どもたちに たくさんの事を教えてくれました。
3月はA君・B君・Cさん・D君が退寮しました。
B君もA君同様、子どもたちにとって良き先輩でした。
4月からは○○○アニメーション学院に入学しますが、入学金やアパート代の 全てとこれからの生活費も、ご両親に負担をかけたくないと自分でまかないました。
一人住まいをする子どもが退寮の際は、私たちは本人が希望する電化製品と、保護者の方々からいただいた商品券やビール券やお米券などをプレゼントしますが、
ほとんどの子が炊飯器と言ってくる中、 彼は何故か「電気ポット」と言ってきました。
初めての事だけに一瞬驚きましたが、すぐに合点がいきました。
貧乏生活が始まるのは目に見えているだけに、ポットを使って煮炊きしようと思っているのです。
その場では承諾したものの、毎日うどんやラーメンでは体に良くありません。
今回はB君の言う通りのポットと、そして内緒で炊飯器を送ったのは言うまでもありません。 Cさんも4月から地元の高校に入学が決まっていますが、入寮時、掃除中にこわしたトイレの
給水 パイプを、自分の不注意と自覚し、内職組がやっている内職で返済しました。
D君もCさんと 同じ様に、親にお願いするのは筋違いという交通費があって、これを同じく内職で返済しました。
一つ1円50銭という商品です。
なんとも気の遠くなる作業ですが、中学生にもかかわらず、 親に迷惑をかけられない・・・とやり抜きました。
みな、それぞれに春を迎えますが、日々努力してきたからこそ今があります。
退寮はゴールではなく、一つのステップにしか過ぎませんが、これからも強く、たくましく
生きていってくれることを願っています。

桜咲く・・・これからが楽しみです。


                          塾教育学院     日下部愛子

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